HLAとは

HLA(Human Leukocyte Antigen=ヒト白血球抗原)は1954年、白血球の血液型として発見され、頭文字をとってこう呼ばれてきました。しかし、発見から半世紀以上を経て、HLAは白血球だけにあるのではなく、ほぼすべての細胞と体液に分布していて、組織適合性抗原(ヒトの免疫に関わる重要な分子)として働いていることが明らかになりました。

2つずつの型は父親と母親から

HLA検査を行うと、遺伝子型ごとに2つの型が判明します。それは、父親と母親の型を1つずつ受け継いでいるからです。両親から受け継いだ遺伝子の染色体は一対になっていますが、そのためにHLAも同様に両親から受け継いだ2つの型が一対となって1つのセットを形成しています。それを「HLAハプロタイプ」と呼びます。
自分のHLA検査を行えば、各遺伝子型の2個の型が判明するだけですが、両親のHLA検査も行うと、どちらの遺伝子がどちらの親から遺伝したのかがわかります。

HLAのハプロタイプの組み合わせは数万通り

今日あるHLA検査は、HLAが遺伝子の第6染色体の短腕にあることが解明された結果です。
HLAはA,B,C,DR,DQ,DPなど多くの抗原の組み合わせで構成され、さらにそれぞれが数十種類の異なるタイプ(アリル)をもち、ハプロタイプの組み合わせは、数万通りともいわれます。HLAはヒトの体の中で重要な免疫機構として働いており、その主な役割は自他認識をすることにあります。

移植とHLA適合検査

HLAは両親からその半分ずつを受け継ぐため、親子や兄弟の間でも一致する確率は低く、まして非血縁間では数百〜数万分の1の確率でしか一致しないといわれています。
造血幹細胞移植や臓器移植では、自分のHLAのタイプに合わないものはすべて異物と認識して攻撃を始めてしまうため、HLAの適合性が重要視されます。

そのために主に血縁者間でHLA検査を行い、ドナーとレシピエントの適合性を読みとることが必要となります。

がんワクチンとHLA

日本人の半数はがんに罹り、三分の一はがんで亡くなります。がんの三大治療法は「外科手術」「化学療法」「放射線療法」です。それらの効果を高めるために「がんワクチン療法」が注目されるようになってきました。がんに特異的な(正常細胞には無くてがん細胞だけがもつ)ペプチドを接種して抗-がん効果を高める治療法です。ペプチド・ワクチンはある特定のHLAに効くように開発されており、HLAタイピングががんの治療に必須となる時代になってきています。

HLAを知って病気を予防する

多くの研究者により、病気とHLAに関係があることがわかってきました。下記の表をご覧ください。
HLAを知ることによって、どのような病気に、どの程度かかりやすいかがわかることがあります。
例えば、糖尿病に他人より4倍なりやすい(B54、DQB1*04:01、DRB1*04:05)、潰瘍性大腸炎を4倍発症しやすい(DPB1*09:01、DR2、B52など)、ベーチェット病(Behcet病=眼病)に9.3倍かかりやすい(B51)などがあります。
ただし、マーカーとなるHLAをもつ人が必ず発症するわけではありません。自分のHLAを自覚することによって、日頃から体調に気を配り検診回数を増やすなどの自己管理で病気を防ぐことができます。予防は究極の医療です。

HLA Data

1. 日本人に多いHLAハプロタイプ上位10位まで

※日本人742家系(n=2895)より算出
順位 A-C-B-DR-DQ-DP ハプロタイプ頻度
1 A*24:02-C*12:02-B*52:01-DRB1*15:02-DQB1*06:01-DPB1*09:01 7.01%
2 A*33:03-C*14:03-B*44:03-DRB1*13:02-DQB1*06:04-DPB1*04:01 2.90%
3 A*24:02-C*07:02-B*07:02-DRB1*01:01-DQB1*05:01-DPB1*04:02 2.59%
4 A*24:02-C*01:02-B*54:01-DRB1*04:05-DQB1*04:01-DPB1*05:01 2.00%
5 A*11:01-C*01:02-B*54:01-DRB1*04:05-DQB1*04:01-DPB1*05:01 1.04%
6 A*02:07-C*01:02-B*46:01-DRB1*08:03-DQB1*06:01-DPB1*05:01 0.86%
7 A*24:02-C*12:02-B*52:01-DRB1*15:02-DQB1*06:01-DPB1*02:01 0.76%
8 A*02:07-C*01:02-B*46:01-DRB1*08:03-DQB1*06:01-DPB1*02:02 0.69%
8 A*11:01-C*04:01-B*15:01-DRB1*04:06-DQB1*03:02-DPB1*02:01 0.69%
10 A*24:02-C*01:02-B*59:01-DRB1*04:05-DQB1*04:01-DPB1*04:02 0.62%
2011年9月現在

2. 日本列島人における抗原内アリル多型性

※抗原は主なもの、臨床的意義の高いもののみを抽出
抗原名 アリル名 日本人遺伝子頻度
A2 A*02:01 11.64%
A*02:06 9.29%
A*02:07 3.49%
A*02:10 0.41%
A*02:18 0.05%
A*02:03 0.04%
A24 A*24:02 36.09%
A*24:20 0.68%
A*24:08 0.02%
A*24:04 0.01%
A26 A*26:01 7.65%
A*26:03 2.27%
A*26:02 1.86%
A*26:05 0.08%
A*26:06 0.01%
A*26:04 まれ
A11 A*11:01 8.98%
A*11:02 0.17%
B13 B*13:01 1.22%
B*13:02 0.32%
B39 B*39:01 3.43%
B*39:02 0.28%
B*39:04 0.21%
B61 B*40:02 8.04%
B*40:06 4.54%
B*40:03 0.34%
抗原名 アリル名 日本人遺伝子頻度
B62 B*15:01 7.76%
B*15:07 0.59%
B*15:27 0.07%
B71 B*15:18 1.44%
B75 B*15:11 0.98%
B*15:02 0.05%
DR15/16(2) DRB1*15:02 10.66%
DRB1*15:01 7.76%
DRB1*16:02 0.98%
DR4 DRB1*04:05 13.62%
DRB1*04:06 3.19%
DRB1*04:03 2.78%
DRB1*04:10 2.11%
DRB1*04:01 0.89%
DRB1*04:07 0.50%
DRB1*04:04 0.27%
DR8 DRB1*08:03 8.62%
DRB1*08:02 4.28%
DR12 DRB1*12:01 3.63%
DRB1*12:02 1.81%
DR13 DRB1*13:02 5.53%
DRB1*13:01 0.58%
DR14 DRB1*14:54 3.47%
DRB1*14:05 1.99%
DRB1*14:03 1.60%
DRB1*14:06 1.28%
DRB1*14:07 0.09%

3. HLAと日本人の病気の相関表

疾患 HLA オッズ比
強直性脊椎炎 HLA-B27 >1.000
ナルコレプシー HLA-DRB1*15:01 >1.000
HLA-DQB1*06:02 >1.000
インスリン自己免疫症候群 HLA-DRB1*04:06 >1.000
Behcet病 HLA-B51 9.3
高安動脈炎 HLA-B52 3.2
HLA-B*39:02 8.5
亜急性甲状腺炎 HLA-B*35:01 18.0
HLA-B*67:01 11.2
Buerger病 HLA-B54 2.5
HLA-DRB1*15:01 2.7
HLA-DRB1*16:02 10.7
尋常性乾癬 HLA-Cw6 1.7
HLA-Cw7 1.5
関節リウマチ HLA-DRB1*04:05 4.4
HLA-DQB1*04:01 4.4
糖尿病Ⅰ型 HLA-B54 4.8
HLA-DRB1*04:05 4.0
HLA-DQB1*04:01 4.3
HLA-DRB1*09:01 1.3
多発性硬化症 (大脳、小脳型) HLA-DRB1*15:01 3.1
多発性硬化症 (眼神経、脊髄型) HLA-DPB1*05:01 9.0
Graves病 HLA-A2 2.0
HLA-DPB1*05:01 4.2
橋本病 HLA-A2 2.1
HLA-DRw53 4.5
原発性胆汁性肝硬変 HLA-DR8(DRB1*08:03) 2.2
HLA-DR2(DRB1*16:02) 5.9
全身性エリテマトーデス HLA-B39 6.3
HLA-DR2(DRB1*15:01) 3.0
Crohn病 HLA-DRB1*04:05 2.0
HLA-DQB1*04:01 2.0
潰瘍性大腸炎 HLA-B52 4.1
HLA-DR2 4.5
HLA-DPB1*09:01 4.8
混合結合組織病 HLA-DRB1*04:01 5.0
川崎病 HLA-DPB1*02:02 3.7
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